ウニ

ウニについて書きたい。ワニではない。ウニとワニは似ているが、それは字面に限った話だ。その一方で、ウニとクリは見た目が似ている。全く別の、それはそれは遠い系統に位置しているにも関わらず、類似した形状と大きさを備えている。ちなみに、ウニには複数の漢字表記があるが、そのうちのひとつは「海栗」である。

 

何年か前にテレビで、水族館のウニをクリと入れ替える企画をやっていた。唯一、子供だけがこの嘘を見破っていたが、きっとその子供はウニを知らなかったのだと思う。ぐ〜。食べ物の話をしていたらお腹が空いてきたので、近所のコンビニに昼ごはんでも買いに行きたい。そういえば、ウニとクリは食べることが出来るという点でも共通している。

 

コンビニには色とりどりに加工された食品が並んでいる。原型を留めないほどに変わり果てた食材からはもう、それが生きていたころの息吹を感じとることはできない。平和な時代の訪れとともに、殺生を忌避する風潮が社会に広がった。食品を加工する目的には、調理を簡単にしたり保存期間を長くすることだけでなく、殺生の痕跡を隠すことも含まれているのかもしれない。

 

「命の価値は等しい」などと言われることがあるが、牛や豚を屠殺することに心理的抵抗を覚える人は居ても、クリを収穫して食らうことに忌避感を覚える人はほとんどいないだろう。では、犬猫を殺すことはどうだろうか?鳥は?魚は?ウニは...?

 

殺生をする際に心理的抵抗が発生するか否かは、何によって決定されるのだろう。個人的には、顔が重要だと思う。良し悪しではなく、有無の話だ。たとえ顔に表情が無くとも、多くの人は、少なくとも私は、そこから感情を勝手に読み取ってしまう。塩焼きになったサンマの目を見ていると、サンマの怨嗟の声が聞こえてくる気がする。一方でウニは何を考えているのか分からない。何も考えていないようにも思える。しかし、感情が読み取れないから気楽に殺せる、というのも可哀想な話だ。ウニはこのことについてどう思っているのだろう。直接聞いてみたいところだが、当の本人は黙して語らないままだ。

 

 

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